先生、私って勝ったんですよね?

案件の依頼を受け、
長年の裁判を終え、
最後に依頼者から
言われることがあります。

先生、私って、勝ったんですよね?

勝訴判決を得ても、
相手からお金を得ても、
このような言葉が出てくることがあります。

人は、法律的なトラブルにあい、
苦しみ、悩み、弁護士のところへ
やってこられます。

弁護士はその問題を金銭的な
解決へと導くことが多いです。

しかし、仮に金銭的に賠償を受けても、
その人の生活がもとに戻るわけでは
ありません。

裁判をする前、裁判をしている途中は、
判決という目標があります。

そこに一点集中していきます。

ところが、判決が下って、
お金を手にすると、
その目標がなくなります。

そこではっと我に返る。

「これでよかったのかな」
「私が求めていたのは
これだったのかな」

なんだかむなしいというか、
すっきりしない感情です。

そんな心情から、
弁護士に確認したくなるのだと
思います。

間違いなく勝訴判決。

それでもすっきりしない。

賠償金を得た。

それでもすっきりしない。

これはどこから来るのか。

過去に起きた出来事に対して、
どのような意味づけをするか。

裁判を経て、判決を得た。

それに対してどのような
意味づけをするか。

これは、依頼された方本人が
乗り越えなければならない
問題です。

多くの弁護士は、
裁判をして、判決を得る。
賠償金を得る。

ここに集中します。

それもそのはず、司法試験で
勉強することも、
その後研修等で磨く技術も、

如何に勝つか、ということです。

しかし、「解決」とは何か、を
考えると、依頼された方が
自分自身の中で、

自分自身が経験したトラブルを
「完了」させた時です。

過去にとらわれず、
完了したものとして、
未来へと向かうことができる。

そこまでたどりつけるか。

弁護士としてできることは
限られています。

それは本人の問題だよ、と
言えばそのとおりです。

しかし、依頼者との面談を通じ、
裁判を通じ、あらゆる機会を通じて、
その人が「完了」できるよう
サポートする。

そこにしっかりと
視点をあわせねばならないと
思っています。

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