証拠があるだけでは勝てない~論より証拠というけれど

2018年6月11日、東京高裁は
袴田さんの再審請求を
認めない決定をしました。

主な理由は、再審開始を認めた静岡地裁が
最大の根拠としていたDNA型鑑定について、
「手法に疑問があり、
結果も信用できない」と
判断したことです。

刑事裁判の場合、
有罪判決が確定しても、
有罪の根拠になった証拠が
偽造だと分かったり、判決を
変えるべきだという明らかな
証拠が見つかったりした場合に、
裁判をやり直すことができます。

これが「再審」です。

そのためには、裁判所に対して、
「再審をしてほしい」と請求して
認めてもらなければなりません。

袴田さんの件は、2014年に静岡地裁で
再審を開始する決定が出されて、
釈放されていました。

今回は、それに対する検察側の
不服申立に対して、
検察側の主張を認めた格好です。

改めて今回思ったのは、
証拠の見方の恐ろしさです。

(専門的には信用性判断とか
証拠の評価と言いますが)

地裁と高裁の判断の分かれ目は、
新しくなされたDNA型鑑定をどう見るか、です。

今回、弁護側は、
もともと鑑定不能とされていたものに

新たに挑み、新しい手法でDNA型を鑑定しました。

しかし、その鑑定について、高裁は
「研究途上の手法で有効性には
重大な疑問が存在する」
と指摘したのです。

DNA型鑑定は時代と共に
その精度がどんどん向上していて、

過去、足利事件や
東京電力女性社員殺害事件などで

裁判が間違っていたことが判明しました。

一方、司法研修所は、DNA型鑑定を
「過信してはならない」と指摘しています。

もちろん、信じすぎることは問題がありますが、
今回のように新しい手法で
「ひょっとしたら無罪かも」という

疑問が出てきたのであれば、
それを積極的に評価すべきではないかと思います。

(逆に、有罪の方向で判断する場合には相当慎重にすべきですが・・・)。

刑事事件で、間違って人を刑務所に送り込んでは
取り返しがつかないからです。

同時に、弁護士にとっては、
証拠をどのように見るのか、
それを裁判官に適切に伝えて、
しっかりと説得することが重要です。

よく「論より証拠」と言われます。

でも、どれだけ証拠があっても、
証拠の見方を伝えられなければ、
証拠の見方を説得できなければ、
負けてしまいます。

弁護士の腕によって証拠が生きることもあれば、
死んでしまうこともあります。

さらなる高みを目指して努力したいと思います。

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