先日、書類をご持参され、これ、ハンコが押してないから無効ですよね?と
聞かれる方がありました。
「いえいえ。そんなことはないですよ。この署名は相手の方のもので間違いないでしょうか?」
「はい!目の前で署名していただきました」
「そうであれば、大丈夫ですよ」
とお話ししました。
日本はハンコの文化が浸透しているので、書類にハンコを押すことが多くあります。
そのため、ハンコが押していないと、書類全体が無効なのではないかと思う人もあります。
実は、ハンコは必須ではありません。
要は、相手が契約書に署名か押印をしていればよいのです。
たとえば、本人の署名。これは普段のその人の筆跡と比較することによって、その人の署名だとわかります。
その人の署名だと言うことであれば、事実上、その人の意思に基づいて署名されたものと推定されます。
一方、ハンコです。ハンコが押してあっても、パソコンで打ち出された氏名の横に100円ショップで売っているようなハンコが
押されていた場合はどうでしょうか。誰でも作れてしまいます。そうすると、ハンコが押してあっても、その人の意思で作られたか
どうかがわからなくなってしまいます。
そこで利用されるのが実印と印鑑証明書です。
実印が押されて印鑑証明書が添付されていれば、その人のハンコだということが証明できます。
そうすると、本人の意思によって押印されたものと推定されます。
法律的に言いますと、最高裁の判例によって、本人の意思による押印や署名が事実上推定され、
民事訴訟法の規定によって文書の成立の真正が推定されるということになるのですが、
少々難しいので、ざっくりと説明を致しました。
ここで注意が必要なのは、実印と印鑑証明書の管理です。
この二つを誰かに渡してしまった場合、契約書を自由に作成できることになってしまいます。
ですから、渡す場合には、何に使うかを明確にし、不要になった場合は返却していただくということが重要です。
また、署名だけでも、契約書としては有効ですので、「ハンコは押していないから大丈夫」などと
安易に考えないように注意したいものです。